日本語の語源を知る 〜目からうろこの語源書〜

プロフィール: 江 副 水 城(えぞえ みずき)、 出身地:熊本県 、学歴: 東京大学 法学部卒 、 趣味:麻雀、言語研究 、著書:『魚名源』 『鳥名源』 『獣名源』 『蟲名源』 『草木名の語源』

【あみだくじ】の語源

アミダクジとは、その先の結果が隠された人数分の線を引いて、各人がなんらかの順序で一本の線を選んで、その引当てた結果を得る、または、その結果に責任をもつというクジ引です。

 現在では、線と線との間に各人に適宜に横線を引いてもらい、縦横の線が交差したところで屈折しながら進むという一層遊び心を加えた工夫をしています。

 

 一音節読みで、はアンと読み「暗い、先が見えない」の意味です。はミと読み、その本義は名詞では「迷路」、動詞では「路に迷う」のこととされています。はダと読み、名詞および形容詞や副詞などの修飾語をつくるのに使われます。つまり、アミダとは、暗迷的の多少の訛り読みであり、直訳すると「暗い迷路の」の意味になっています。

 クジは漢字で、籤と書きます。一音節読みではチィエンと読み、訓読ではクジと読みます。日本語では、なぜ籤の字をクジと読むのかということです。

 クジのクはで「よい、吉」の意味、ジはで「吉、よい」の意味なので、クジとは穀吉であり「吉」の意味です。つまり、クジ引とは、穀吉引であり「吉を引当てる」の意味になっています。

 神社仏閣の「おみくじ」には、大吉、中吉、小吉があり、「おみくじ」を引く主目的は「吉」を引くことであることからも、クジが穀吉であることを推察できると思います。

 以上のことから、アミダクジを引くとは、暗迷的穀吉を引くであり、直訳すると「暗い迷路の吉を引当てる」、少し意訳すると「暗い迷路の先の吉を引当てる」の意味になっていて、これがこの言葉の語源です。

 

 ただし、広辞苑(第六版)には、次のように書いてあります。

「【阿弥陀籤】(籤の線の引き方が、もと阿弥陀の光背に似て放射線状であったのによる)」。

 

 しかしながら、これは、単なる当て字に過ぎない阿弥陀を、作り話に仕上げたものと思われます。なぜならば、「放射線状であった」ということになると、たぶん、半円状になるので、結果を書いておくべき中心部が極めて窮屈であり、それにも増して結果の記載部分をどのようにして隠していたのかという困難な問題もでてきます。つまり、放射線状というのは、極めて不便で実際的ではないのであり、ほんとうにそうだったのかどうか疑問が残る説といえます。

 

※訓読とは、意味を含んだ日本語読み、ということです。

 

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【あやふや】の語源

アヤフヤは、とても頻繁に使われる言葉です。しかしながら、おおよその意味は分かっていても、さて、どうしてこのような言葉ができたのか、どうして仮名でしか書き表せない言葉なのかなどの疑問が湧いてくると、それを解明するのは、かなり難しいのです。

 このような畳語や畳語類似の言葉の場合のヤは、一音節読みでヤと読む、語気助詞の呀である場合が多く、アヤフヤのヤもその例に漏れません。

 問題はアとフです。啊はアと読み、疑問の意味を表す語気助詞で、喫不喫啊?(食べるの、食べないの)のように使います。

また、乎はフと読み、同じく疑問の意味を表す語気助詞で、然乎否乎?(そうなの、そうでないの)のように使います。

アヤフヤにおけるアとフは、この「啊」と「乎」なのです。つまり。この言葉は、それ自体はちゃんとした意味をもたない、啊、呀、乎の三種類の疑問の意味の語気助詞だけからできた珍しい言葉です。

 

 したがって、アヤフヤを漢字だけで書くと啊呀乎呀になり、直訳すると「どっちなの」の意味になり、これがこの言葉の語源です。

 

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【あべこべ】の語源

 アベコベは、物事の順序・位置、物事に対する意見・考え方等が、本来のものと、逆さまであることを表現するときなどに使われます。

 例えば、「前と後がアベコベだよ」、「その考え方は、アベコベではないか」などと使います。したがって、アベコベのアとコとは、指示代名詞らしいことが想像されます。

 

 日本語で、指示代名詞と言われるものに、「あれ」、「それ」、「これ」があります。面白いことに、これらの指示代名詞の頭文字だけを合わせると「あそこ」や「そこ」になっています。

 

 さて、漢語では、「あれ」と「それ」の区別はなく、日本語の「あれ」と「それ」に相当する語は、いずれも那(ナ)です。また、「どれ」に相当する語も那(ナ)です。「これ」に相当する語は這(チォ)といいます。

 

 このようなことから、アベコベのアとコは、漢語ではなく、日本語の指示代名詞の「あれ」と「これ」らしいことが推測されます。そうすると、アベコベという言葉の意味を決定づけるのは、「ベ」ということになりますが、果たしてどんな意味なのでしょうか。

 

 背は、一音節読みで、ベイと読み「背(そむ)く、違背する、違反する」などの意味です。アベコベの「べ」は、背の多少の訛り読みであるとすると、あべこべは「あ背こ背」になり、「あれは違背しているこれは違背している」、つまり、「あれもこれも違背している」ということになり、これがこの言葉の語源と思われます。

 違背とは、違っていて反対であること、つまり、逆さまであることです。したがって、アベコベとは「あれとこれとが逆さまである」という意味になるのです。

 

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