日本語の語源を知る 〜目からうろこの語源書〜

プロフィール: 江 副 水 城(えぞえ みずき)、 出身地:熊本県 、学歴: 東京大学 法学部卒 、 趣味:麻雀、言語研究 、著書:『魚名源』 『鳥名源』 『獣名源』 『蟲名源』 『草木名の語源』

【あべこべ】の語源

 アベコベは、物事の順序・位置、物事に対する意見・考え方等が、本来のものと、逆さまであることを表現するときなどに使われます。

 例えば、「前と後がアベコベだよ」、「その考え方は、アベコベではないか」などと使います。したがって、アベコベのアとコとは、指示代名詞らしいことが想像されます。

 

 日本語で、指示代名詞と言われるものに、「あれ」、「それ」、「これ」があります。面白いことに、これらの指示代名詞の頭文字だけを合わせると「あそこ」や「そこ」になっています。

 

 さて、漢語では、「あれ」と「それ」の区別はなく、日本語の「あれ」と「それ」に相当する語は、いずれも那(ナ)です。また、「どれ」に相当する語も那(ナ)です。「これ」に相当する語は這(チォ)といいます。

 

 このようなことから、アベコベのアとコは、漢語ではなく、日本語の指示代名詞の「あれ」と「これ」らしいことが推測されます。そうすると、アベコベという言葉の意味を決定づけるのは、「ベ」ということになりますが、果たしてどんな意味なのでしょうか。

 

 背は、一音節読みで、ベイと読み「背(そむ)く、違背する、違反する」などの意味です。アベコベの「べ」は、背の多少の訛り読みであるとすると、あべこべは「あ背こ背」になり、「あれは違背しているこれは違背している」、つまり、「あれもこれも違背している」ということになり、これがこの言葉の語源と思われます。

 違背とは、違っていて反対であること、つまり、逆さまであることです。したがって、アベコベとは「あれとこれとが逆さまである」という意味になるのです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました